MENTOR
INTERVIEW

多角的視点から持続性の高い地域観光を研究

開発と発展そして
持続可能な観光を
条件不利地域に
見出す取り組み


文化創生コース

人間社会科学研究科

Funck Carolin 教授

多角的視点から持続性の高い地域観光を研究

 

現地調査を基本に「観光」を考えていく研究

フンク先生の専門分野は「観光地理学」。これは、地理学の視点から観光を見るというもので、中でも先生は、観光地の発展、観光地が発展することで生じる問題、持続可能な観光といったことを中心に研究している。研究のフィールドは主に日本とドイツだ。

先生の研究には2つの重点があるという。
ひとつは「瀬戸内海の研究」。特に海の観光やマリンレジャーについての研究だ。

「瀬戸内海は地中海と比べられるほどの海なのに、海の観光やマリンレジャーが全然発展していないんですね。それは何故なのかというのが大きなテーマ。これは、私が元々、日本の観光に興味を持った出発点なんです」とフンク先生。

そしてもうひとつは「外国人観光客の研究」だ。

「日本は10年ほど前から外国人観光客の誘致に力を入れるようになってきましたが、それ以前は、海外に行く人は多いものの、海外から来る人は少ないというのが特徴でした。それが国の政策によって変わってきた。しかし、一部の地域に外国人観光客が集中しています。そこにはどういった課題があるのかを見出すために、観光客に対してアンケート調査を行っています」。

岐阜県の飛騨高山や大分県の別府等とともに、広島県の宮島については、広島にやってきて以来、調査を継続しているという。

研究の醍醐味については、「観光は激しく変化するものなので、それがおもしろさだと思います。それに、オモテとウラがあって、その両方を見ることもおもしろいですね」と語る。

一方で、日本の観光施策については、「日本では突然、観光に力を入れて経済を活性化させようとしたりしますが、そんなに簡単な相手ではない」と手厳しい。そして、そうした認識を高めていくことも、先生の研究がめざすところのひとつであるという。

資料の活用法や調査法を通じて学ぶ「持続可能な観光」

条件不利地域は世界的に見ても、観光に力を入れているところや、これから観光を通じて発展をめざすというところが多い。そして、観光は成長産業であるため、条件不利地域の活性化を考えるたおやかプログラムで、観光という分野について学ぶことは大変重要だと先生は言う。

「観光には、変化が激しいとか、オモテとウラがあるとか、なかなか安定した経済的な活動にはならないとか、いろいろな特徴があるんですね。それを分かったうえで、観光の発展に取り組むべきだと考えます」。

先生の教育科目では、「持続可能な観光」がテーマであることから、まず、世界観光機構が出している指標を利用することを考えているという。

「地域に密着した指標が多いんですが、日本ではあまり利用されたことがありません。ひとつにはそれを使って観光について考えます」。

さらにもうひとつ計画されているのは、総合科学研究科で行われている「21世紀科学プロジェクト群」との連携だ。
「私はその中の『総合科学プロジェクト』内の『文明と自然研究』というプロジェクトで、ずっと屋久島の調査をしています。世界遺産の場所でもあり、国際的にも注目される観光地ですので、そこに調査に行って、その持続可能性をいろいろな視点から見てみたいと思います」。

国際理解を深め、お互いから学ぶ姿勢を大切に

地理学自体がもともと文理融合であるため、たおやかプログラムへのとまどいはないというフンク先生。そのうえで、これまでの経験から、同プログラムに臨む思いを語ってくれた。

「いろいろな国の方たちが集まって学ぶ大学院では、教員からだけではなくて、学生たちがお互いに学ぶことが多いんですね。以前にJICAの関係で、持続可能な観光に関する講習を行ったことがあるんですが、その時もそうでした。そういう意味では、“お互いにみな教員である”と考えています」。
そうしたなかで得られるのは、“国際理解を深める”ことだと先生は言う。

「すべての問題に複数の視点があることを学んで欲しい。観光だけでなく、政治的な問題もそうですし。そうしたことを理解できれば、国際的に活動できるのではと思います」。

また学生には、いろんな疑問を持って、積極的に学びに関わって欲しいと期待する。
「特に観光の場合は見せる産業なので、各国・各地域がいい側面だけを見せているんですね。だから、それを見るだけに終わらずに、つっこんで考える、いろんな疑問を持って臨む姿勢が重要だと思います」。

さらには、オンサイト教育が日本で実施される場合に備えて、特に海外の学生は、ある程度、日本語を勉強して欲しいと話す。
「オンサイトでは自分で話すことが必要。私自身、日本語はほとんど来日後に現地で学びました。ぜひ実際のオンサイトが始まるまでに日本語もしっかり習得して欲しいですね」。

Funck Carolin 教授
フンク カロリン

人間社会科学研究科 人文社会科学専攻 人間総合科学プログラム

1998年 フライブルク大学地学部人文地理研究所博士後期課程修了(理学博士)
1998年~2000年 広島大学総合科学部 講師
2001年~2005年 広島大学総合科学部 助教授
2006年~2007年 広島大学大学院総合科学研究科 助教授
2008年~2013年 広島大学大学院総合科学研究科 准教授
2014年~2020年3月 広島大学大学院総合科学研究科 教授
2020年4月~ 広島大学大学院人間社会科学研究科 教授

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