メッセージ
越智光夫学長(全体責任者)からのメッセージ
「自由で平和な一つの大学」を建学の精神とする広島大学は、「平和を希求する精神」「新たなる知の創造」「豊かな人間性を培う教育」「地域社会・国際社会との共存」「絶えざる自己変革」の5つの理念を掲げ、全国でも有数の総合研究大学として発展を遂げています。
現代社会は科学技術が目覚ましく進歩する一方で自然災害の多発や貧困、地域紛争など多くの困難を抱えています。こうした課題に挑戦し、世界の平和と持続的な発展に貢献するために、本学は2014年度から、博士課程前期・後期を一貫した学位プログラム「たおやかで平和な共生社会創生プログラム」を開設しました。
このプログラムは従来の学問分野・研究領域の枠組みを超えて新たな知の枠組みを創造できる人材を育成し、広く産官学にわたるグローバルリーダーとして社会に送り出すことを目的としています。教育や医療などの基本的なサービスに恵まれない条件不利地域の抱える課題解決を図るため、新しい技術やアプローチを開発・実践し、多文化共生に貢献するリーダー育成を目指します。
「たおやか」とはしなやかな様子を表す美しい言葉です。逆境にひるむことなく、たおやかな未来を切り開く志を持つ学生の参加を期待しています。
金子慎治理事・副学長(プログラム責任者)からのメッセージ
「たおやかプログラムでタフなグローバルリーダーに」
私たちが2014年4月から展開している「たおやかプログラム」は、広島大学が強みを持つ人文・社会系の分野と科学技術系分野を融合し、幅広い視野と社会に必要とされる専門性を備えた人材を育成します。そのために、地域独自の社会と多様な文化を深く理解し、それを踏まえて地域が抱える課題を抽出し、その克服に必要な先端科学技術をその地で見出し開発して、社会に実装する教育を実施します。
さらに私たちが重要視していることは、その教育が学生主導で展開されることです。教員が専門知識を伝達するのではなく、フィールドの中で学生自身が地域の課題を体感し、その解決方法を技術的に構築し、それを地域社会に組み込む方途を探究する、「学生提案支援型教育」です。とりわけ、人文・社会系、先端技術系、社会工学・開発科学系といった異分野の学生がチームを組んで、条件不利地の抱える課題解決に取り組む「オンサイト・チームプロジェクト」では、異種間格闘技にも似たタフな経験を通して、人間的な成長を遂げてもらうことになるでしょう。その過程で、大学教員や豊富なキャリアを有するプロフェッショナルメンターは、学生自身の成長を支援する役割に徹します。
このプログラムは、誰かが作ってくれた舗装道を快適に走ることにはならないでしょう。しかし、教員スタッフとともに学生の皆さんが切り拓いていく道は無限の可能性につながっています。高い志と気概を持った学生のプログラムへの参加を期待しています。
藤原章正副学長(プログラムコーディネーター)からのメッセージ
今日の地球上では、グローバル化、情報化、地球環境問題など、社会に多大な影響を与える変化が激しい勢いで進行しています。個々の地域社会は大なり小なりこれらへの対応に迫られていますが、中にはこの大きな流れに翻弄され存亡の危機に瀕している社会も少なくありません。それゆえ、多文化が共生するには、その前提として地球上の個々の地域社会が尊重され、自律性と持続性を獲得することが不可欠と考えます。
本プログラムが創生を目指すのは、このような課題に応えうる「たおやかで平和な共生社会」です。このような共生社会を創出するには、地域の文化を起点として、そこから課題を見出し、技術創生を行い、その成果が社会に実装され、そこから文化創生へと発展するという、文化・技術・社会が一体となった連鎖的発展の実現が必須と考えます。
本プログラムの教育の軸となるのは、オンサイト教育とリバースイノベーションです。オンサイト教育では、多くの課題を抱えている条件不利地域を対象とします。その逆境が教育にとって絶好のフィールドとなると考えるからです。具体的には、貧困・格差に悩む南アジア地域と過疎・高齢化が進む日本の中四国地域をとりあげます。もう一つの軸であるリバースイノベーションとは、文化が牽引する地域発のイノベーションです。これにより、ボトムアップ型の価値創生・商品開発・制度設計が行われれば、条件不利地域の活性化に寄与することでしょう。
本プログラムを修了した学生諸君が、グローバルリーダーに相応しい自主性、実行力、多角的思考、創造力を身につけ、オンサイト・リーバースイノベーションを推進するリーダーとして広く世界で活躍し、多文化共生に貢献することを期待しています。