光や電磁波の最先端研究から社会に役立つ応用・実用の道を 技術創生コース 先端物質科学研究科角屋 豊 教授 THz帯電磁波技術の開発と金属ナノ粒子による光技術の研究

光が広げる新たな世界。未活用だった領域や物質への挑戦

広く言えば光技術を専門とする角屋先生。中心となるのは、THz(テラヘルツ)波技術とプラズモニクスという2つの分野の研究だ。まず、THz波技術について解説いただいた。

THz波とは光と電波の境目にあたる電磁波を指す。「そもそも光も電波も電磁波で、THz=10の12乗ヘルツよりも高い周波数のものを光、低い周波数のものを電波と分けて呼んでいるんです」と先生。そして、電波をつくる方法はトランジスタが主流で、光を出す技術はレーザーが中心。ちょうどTHzあたりで双方の動作限界となり、扱いにくいためにこれまであまり使われてこなかったのだが、いまや双方の領域から世界中がこぞって研究をしているという。

THz波は光には透明でないものも透過する性質があり(金属は不透明)、この性質を使った応用が広がってきています。空港のセキュリティーに使われているミリ波のボディースキャナーは電波側からのアプローチです。また、空港での麻薬や、薬や食品の異物検査などの様に、もう少し細かく見る必要があったり、成分が分かった方が良い場合には、光側からのアプローチが進んでいます。

先生の研究室では、こうしたTHz波を放出する・検出するといった技術研究によって性能を高め、より使いやすいものにしていこうとしているという。

そして、もうひとつのプラズモニクスについて。「これは、金属的なものを用いて光をコントロールする技術」であるという。

「金属というと普通、光を反射するだけというような扱われ方なんですが、実は昔からいろいろと使われてきているんです。例えば、教会にあるステンドグラス。あれが色あせないのは、色の起源が金属だからなんですよ。ナノサイズの金属の微粒子が使われているんです」と先生。通常のガラスのレンズでは光を小さく集光する限界があるのですが、金属を使うとこの限界を超えることができるので、金属の探針を使った超高解像の顕微鏡なども実現しています。

先生の研究室では2010年に、こうした性質を使った「光のアンテナ作り」に成功している。「アンテナというのは電波に使うもので、典型的なのは、TVの地上波放送を受信するために各家に必ずあったアンテナ。八木宇田アンテナというものなんですが、これの光用のものをつくるということをやりました。こうした技術は、たおやかプログラムと関係するところで使いたいと考えています」。

半導体を使った光技術を講義。実用的なものづくりに意欲

たおやかプログラムで先生は、「半導体光物性」という教育科目を担当する。これは、非常に基本的な講義内容で、半導体と光の関係を学ぶものだ。「半導体に光を当てると何が起きるか、それをどうやって調べるかといったようなことを解説していきます」と先生。レーザーの話を中心に、一部THz波やプラズモニクスの解説も盛り込まれる。

現在、先生のもとにはたおやかプログラムの学生はまだいないが、このプログラムに対しては、大いに共感できる部分があるとのこと。

「このプログラムに関わったからというだけではないんですが、年齢的なこともあって、研究者としての最後のあたりで、普段の生活に役立つことをやりたいと思うようになったんですよ」。

これまでは基礎研究がほとんどだったが、工学部出身のため、「今ないものを創り出したい」という想いも実は強いそうだ。

「基礎研究ではどうしても高級な装置を使う方向にいくんですね。しかし、元々、応用に興味がない訳でもないし、ものをつくりたいという想いもあるんです。それで、ここに来て、実用的に使えるような仕事をもう少し増やしたい、そちらの方に積極的にいこうかなと思っているところです」と今の心境を語ってくれた。

今春から先生は、広島大学が選定したインキュベーション研究拠点のひとつ、「スマートバイオセンシング融合研究拠点」のメンバーとしても活動している。ここでの成果のひとつとして発表された、スマートフォンを使ってアスベストを現場で検出し、離れた場所から現場のサポートもできるという画期的な機器「持ち運べるiPad蛍光顕微鏡」は、こうした先生の想いと合致しており、光技術を駆使してさらに小型化・高性能化する研究に着手されています。

これからのエンジニアにとってかなり有益な学びの場に

このように、実用面への応用に対する関心が高まっている先生には、たおやかプログラムで学ぶことの意義についても確かなものが感じられるという。

「最初から条件不利地域のためにと思ってやる場合もあるでしょうし、途中まではそうでもないけれども、最後にはそこに持っていくというような、いろんなアプローチがあると思うんです。いずれにせよ、文理融合や条件不利地域、アジアの国々といった、たおやかプログラムの特徴と言えるようなことは、いまの工学部の学生としては、本来誰しもが意識すべき部分ではないかと思っています」。

先生は、たおやかプログラムが学生にもたらす教育的効果に大きな期待を寄せている。
「日本の地理的・歴史的なことを考えると、アジアというのは非常に重要な存在。うまくパートナーになり得る関係だと思うんです。そうした意味でも、アジア全般とどうやって一緒にやっていくかという目を養って欲しい。特に、製造業に進もうとしている学生たちは、そうした目を持っていた方がいい。そう思いますね」。

角屋 豊 教授
カドヤ ユタカ

先端物質科学研究科 量子物質科学専攻

1994.4.1~1998.3.31 広島大学工学部 助手
1998.4.1~2001.3.31 広島大学工学部 助教授
2001.4.1~2004.3.31 広島大学大学院先端物質科学研究科 助教授
2004.4.1~ 広島大学大学院先端物質科学研究科 教授