環境やエネルギー問題の観点から条件不利地域の発展に寄与するには 社会実装コース 国際協力研究科 金子 慎治 教授 途上国の持続可能な発展と環境政策のあり方に関する研究

途上国の開発や経済発展と環境との関わりを広く研究

「環境経済学」というのが金子先生の専門分野である。これは、環境問題に対して経済学的なアプローチをすることで問題解決を考えていくといった学問だ。ここでいう環境の中には、汚染問題や資源およびエネルギーの問題なども含まれてくるという。

「問題を広く捉えて研究をしている訳ですが、私の所属する国際協力研究科には、特に途上国の留学生が多いので、彼らの関心や興味が研究のスタートになることが多いんです」と金子先生。

最近の具体的な研究例としては、『太陽光発電の貧困地域における普及と活用』が挙げられる。

なかでも去年から新たに始めたのが、太陽光発電のエネルギーで水を汲み上げる“ソーラーウォーターポンピングシステム”をネパールの山岳地域に導入すると、それによって人々の生活がどう変化するかといった研究だ。

「特徴としては、導入による純粋な効果を抽出するためには、対象となる村の特性の影響が排除できないので、導入の前に非常に多くの村のサンプルを取って、長期間モニターしていくという手法を採用しています。こういう方法を取るのは、教育や医療分野では多くあるものの、環境分野ではまだまだ少ない。新しい取組みとしてやっていこうとしています」。

ネパールの村は60~80世帯くらいがひとつの村を形成しており、しかも非常に均質であるため、研究対象に好適であるとのこと。こうした村々で定点観測を向こう4~8年間にわたって行う計画であるという。

途上国で環境問題の課題解決に挑む力を身につける

そんな金子先生がたおやかプログラムで担当する科目は、「地球環境政策論」だ。
社会実装コースが対象とするのは、途上国の特に貧困地域であるため、日常的な生活と経済的な発展と周辺の環境の結びつきが非常に強いことから、環境経済という分野を学んでいく必要性が高いという。そしてこの科目では、地球環境問題に関する国際交渉の中で、国際社会がどう取り組んできたか、現在どのように取り組んでいるかといった知識を学んでいく。

「資金援助や技術供与を含めた途上国支援のメカニズムについての学習は、特に新しい技術を途上国にどう普及させるかという問題の解決に向けて、さらにはその技術をどう活用するかという課題に挑むための背景として、ぜひとも知っておいてほしい内容です」と金子先生。

「例えば、前述のソーラーポンピングシステムを導入すると、水くみが楽になって女性の家事労働がかなり改善される。すると、節約した時間を女性たちがどう使うかというと、もっと農作物を作るなどして所得を増やす方向に生かせれば良いのですが、彼らは子どもを増やしてもっと貧しくなるという現象が、実際に南米とかアフリカでは起きているんですね。国際機関や国際NGOなどが、外部からの視点でどんどん技術を入れていけばいいかと思いきや、かえって状況が悪くなるというようなことが起こり得るんです」。

このように、過去の事例や現象について詳しく知ることで、新しい技術がその社会にとって有益かどうか、有益にするためにはどうすればよいかをみんなで考えなければならないと先生は言う。

目標に向けて手をつなぐ学生たちを側面支援していきたい

もともと環境系の学問は学際的な領域であるため、先生自身も多領域の先生方との関わりが深く、実際に起こっている問題に柔軟に対応する姿勢が培われてきたと振り返る。また、社会実装コースを取りまとめる立場にあることから、条件不利地域に直接資するようなものを生み出すという本プログラムの目標に向けて、学際的に協力して取り組むべきものとその意義を賞賛する。

「途上国の貧困とか紛争も含めたさまざまな問題は当然、われわれ先進国と無関係ではありません。そういう人たちの社会を手助けするというか、その発展に寄与することが、グローバルな社会の安定的な発展に長期的に関係してくる。そのための“国際協力”なんです」。

従来の援助に関わる人だけがやればいいというような風潮に対しても、「一見関係ないようなところ、例えば先端的な技術開発をやっているような人たちもこうした問題に目を向けて、もっと広く、いろいろな研究者や実務家たちが協力してやっていって欲しい。そう切に願っています」と語り口も熱い。

「途上国のような条件不利地域に行くと、一見、生活自体はシンプルに見えますが、知れば知るほど、けっこう複雑な問題がいろいろあって難しいんです。まずは知識をしっかり身につけて、自分たちでやれることを考えていく。だから、実はそんなに難しいことではないと僕は思っています。でも、そうした事を実行するためには、知識だけでなく『心』も『体』も磨かなければいけないんです。われわれ教員は側面からしっかりとサポートしていきます」。

現在、先生のもとではバングラディシュからの留学生が1名学んでおり、今後の意欲的な活動を大いに期待しているという。

金子 慎治 教授
カネコ シンジ

国際協力研究科 開発科学専攻

1997.9.1~1999.2.26  日本学術振興会特別研究員(PD)
1999.2.27~1999.3.31 日本学術振興会特別研究員(DC)
1999.4.1~2001.3.31  (財)地球環境戦略研究機関 研究員
2001.4.1~2002.3.31  (財)地球環境戦略研究機関 研究員/プロジェクト・マネージャー
2002.4.1~2007.3.31 広島大学大学院国際協力研究科 助教授
2007.4.1~2009.3.31 広島大学大学院国際協力研究科 准教授
2009.4.1~ 広島大学大学院国際協力研究科 教授