MENTOR
INTERVIEW

地形の成り立ちから、自然と人の暮らしとの関わりを解明する研究

地形を読み解く
技術の習得から
条件不利地域での
活用策を探る


文化創生コース

人間社会科学研究科

熊原 康博 准教授

 

地形の成り立ちから、自然と人の暮らしとの関わりを解明する研究

 

専門は「地形」。活断層や、街道と地形の関係等を研究

先生の研究の柱には大きく2つある。「活断層」と「街道・用水路」だ。概要を紹介してもらった。

「活断層というと、地震学の専門家が難しい数式を使ってやると思われがちなんですが、私の場合は数式は使わず、地形や地層から調べるんです」と先生。

直下型地震は活断層の動きで起こるので、地層のずれと年代を調べることで、過去にどれくらいの間隔で地震が起こってきたかが分かるという。

「つまり、フィールドワークで将来の地震が推測できるんですね。こういうところがおもしろくて、大学院の頃から研究を続けています」と先生。

最近では、今年4月にネパールで大地震が発生したため、秋に現地調査に出かける計画とのこと。これまでにも、活断層がどこにあるのかという分布図を、ネパールやブータンで作成しているという。

「こうした活断層の分布図を発展途上国で提供することで、活断層の上に重要施設をつくらないようにするなど、地震のリスクを減らすことに役立つと思うんですよ」。

次に、街道について。これは、昔の道と地形の間にはどういう関係があるのかという研究だ。

「特に、中山道という江戸と京都を結ぶ街道が、どういう地形を通って道がつけられてきたのかというのを調べています。昔はトンネルや橋をつくる技術がないので、地形を生かして道がつけられたはず。その当時、道をつけた人がどういう意図をもってつけたのかというのを、地形から推測する訳なんです」。

地形をどう見ていくか。一次資料の解読と現地調査の両方から学ぶ

先生がたおやかプログラムで担当するのは、「山地地域の比較自然環境学」という科目。これは、前述の街道の研究からつながるもので、中山道の地形を分かりやすく紹介する内容という。

先生によれば、中山道は日本の背骨を通っており、日本で見られる地形のほとんどが、この中山道沿いに見られるという。

「火山の地形、湖の地形、平野の地形など、いろいろ見られて、しかも誰でもわかるような、いい地形がたくさんあるんですよ」と先生。

授業ではまず、京都の三条大橋から江戸の日本橋に向かって歩いた時に、どういう地形が見えて、人々が地形をどのように活かしながら暮らしているかを解説。草津宿そばの天井川という地形の成り立ちを解説する授業など、興味深い内容が続く。

この授業の目標は、「地形の見方を身に付けること」だ。講義を経たあとには、フィールドワークも待っている。出掛けていくのは大学近くの西条盆地。その中のひとつには、写真で紹介している東子の滝(あずまこのたき)もある。

「フィールドワークに出掛ける前には、室内で地図や空中写真を使って地形を見るという予習をしっかりやる必要があります。これをやらずにいきなり現地に行ってもよく分からないままですが、やってから行くと、事前に地図や空中写真で見たものが、現地ではどのように見えるのかというのが分かる。つまり、地形の見方が分かるようになります」と先生。

自分の力で簡単な地形が見分けられるようになると、そこから、地形と人の暮らしの関わりの解明などへと展開していける。実に多様な情報を地形から引き出すための、基本的な知識と技法をこの科目からは得ることとなる。

実際のものを見る姿勢が本プログラムで生きてくると期待

熊原先生は広島大学に着任した直後から、たおやかプログラムに関わっており、現在は広報委員を務めている。直接指導する学生はいまのところいないが、たおやかプログラムに向けての想いを次のように語ってくれた。

「条件不利地域において、地形を読み解くノウハウを生かす方法というのがあるかもしれないと思っています。例えば、こうした地域では、水をどう手に入れるかという問題が重要になるので、その際に、地形を無視していてはおそらく成り立たない。そういった意味で、オンサイトでの大いに役立つレクチャーになるはずです」。

また、期待する学生像についてもメッセージをもらった。
「フィールドワークのための体力ももちろん要りますが、事前の予習に真面目に取り組むことがもっと重要。“根気よく見る”という姿勢が求められます。“根気強さ”というのはおそらく、このプログラムのさまざまなシーンで必要になるのではないでしょうか。また中には、GISを使うことの方を重視して、フィールドワークにあまり良いイメージを持っていない学生もいますが、オリジナルデータを取ってくるということが実はとても意義があると思うんです。何か自分で取ってくるということを通して初めて、条件不利地域に貢献できるものができる。そんな風に考えられる学生の参加を期待したいですね」。

熊原 康博 准教授
クマハラ ヤスヒロ

人間社会科学研究科・教育科学専攻・教師教育デザイン学プログラム

2001.4.1~2003.3.31 日本学術振興会特別研究員
2003.4.1~2004.3.31 広島大学大学院文学研究科 教務補佐員
2004.4.1~2006.3.31 広島大学総合地誌研究資料センター 助手
2006.4.1~2007.3.31 広島大学総合博物館 助手
2007.4.1~2007.10.31 広島大学総合博物館 助教
2007.11.1~2010.3.31 群馬大学教育学部 講師
2010.4.1~2013.9.30 群馬大学教育学部 准教授
2013.10.1~2020.3.31 広島大学大学院教育学研究科 准教授
2020.4.1~ 広島大学大学院人間社会科学研究科 准教授

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