最先端でなくともその地にとって最高のものを生み出す力に 技術創生コース 先端物質科学研究科 三浦 道子 教授 進化を続けるトランジスタおよび半導体の先進的研究

すべての産業界が使用する世界標準モデルを発信

三浦先生の専門分野はデバイス物理。先生の研究室は、トランジスタの世界標準モデルを発信する世界のトップラボとして知られている。トランジスタとは、半導体の持つ性質を利用して増幅機能を備えた半導体素子だ。

「トランジスタはテレビや自動車など、さまざまなものに応用されているんです。例えば、自動車を動かすのにモーターが要る。そのモーターを無駄のないように動かしたり、スムーズに動かしたりするのを『機能』と言うんですが、そうした機能を作る、すなわち、『回路』ですね。回路設計によって、いろいろなトランジスタの組合せを作り、機能を作っている訳です」と三浦先生。

トランジスタ一つひとつがどういう動きをするかという特性を式で記述したものを“モデル”と呼び、先生はこのモデルを世界に向けて発信しているのだ。

先生は言う。「多くの産業界はここで開発したモデルを使っています。日本だけじゃなく世界中が使っているんですよ」。

さらに先生は、エネルギー完全リサイクルに向けたトランジスタの開発など、産業界と協力しながら、次世代デバイスの研究にも幅広く取り組んでいるという。

学生が持っている別次元のものから新しい発展を創りたい

先生はたおやかプログラムの発足に関わった立場から、その理念の実現にかける思いには格別なものがあるという。

「実際にインドに行ってみて、素晴らしいと思うんですよ。時間が非常に静かに動く。赤い大地でみんな、すごく楽しそうにしゃべるんです、自分の思想を。インドの徹底的に貧しい地域の人たちがすごく楽しそうにしゃべる。あれって何かあるんですね。それが本当に素晴らしいと思って…」と三浦先生。その一方で、こうも語る。

「広島の過疎地とも、我々コンタクトを取ってみてるんだけど、みんな恐怖心を持っているんです。それは、そこにあった文化というものを日本全体の開発が飲み込もうとしているから」。

文化とは、その地に生きているもの。その地に人が生きている理由だと先生は言う。

「だから、文化的独立性を生むような助けをしたいというのが、文理融合の目的なんです。文化には方向性ももちろんあるだろうし、異なる考え方もあった。だから、いろんな考え方を受け入れるという姿勢を学生と一緒に学びたい」と三浦先生。

そして、「私にとって一番大事なのは学生。彼らは私のエネルギーですね。彼らは次の世代になっていく存在ですから、彼らが何をやりたいのかを引き出して、彼らが持っている別次元のものを理解する力によって、技術の新しい発展が生まれることを期待しているんです」と微笑んだ。

エネルギーをどういう形で確保するかという問題に取り組む

たおやかプログラムで三浦先生が担当するのは半導体関連の科目だが、最先端の研究分野を条件不利地域でどう生かしていけるかというのが本教育研究の大きな課題になるという。

先生によれば、過疎化を阻止するには、情報・交通・エネルギーという3つの条件がある。その3つを確保した地域を増やしていかなければならないという考えから、“エネルギーの確保”をテーマとして扱う予定だ。

「条件不利地域はどうしてもローテクだと思われるんだけど、そうではなくて、今までのメインストリームとは違う方向を見つけていく。トップのものじゃなくても、回路的に、システムとして工夫することによって、十分達成できることがあると考えています」。

それに向けて、しばらくは太陽電池という形で寄与したいと先生は語る。

「すごくいいものでなくても、安くてボロいものでも、最高の性能を引き出すというのが、次の私の研究課題でもあることから、たおやかプログラムでもそうした観点から取り組んでいきたい。それは、私が思うんじゃあなくて、学生が実際にその地に行ってやってみようという『起動力』がカギなんです」。

学生たちには、実際に自分でそこに暮らしてみて考えてごらん、と促しながら、地域に寄り添う姿勢を身につけて欲しいと期待をかける。

三浦 道子 教授
ミウラ ミチコ

HiSIM研究センター・特任教授

1981.9.1~1984.3.31 マックス・プランク研究所固体物理学研究所 研究員
1984.4.1~1996.9.30 ジーメンス中央研究所 シニア研究員
1996.10.1~2001.3.31 広島大学工学部第2類電子物性工学講座 教授
2001.4.1~2015.3.31 広島大学大学院先端物質科学研究科 教授
2015.4.1~ 広島大学HiSIM研究センター 特任教授

(本取材は2014年時点の内容です)