途上国で生かせるエネルギーや環境問題解決のための技術とは 社会実装コース 工学研究科 大橋 晶良 教授 微生物を活用した省エネ型下水処理システムの研究

超低コスト省エネ型下水処理システムの開発と実用化

大橋先生が所属するのは、環境保全工学研究室。環境問題の解決や環境の保全・再生等の方法を探る環境工学を専門としている。

先生の研究の柱は、「途上国に適した超低コスト省エネ型下水処理システムの開発」である。

先進国での下水処理システムの主流は「活性汚泥法」と呼ばれるもので、好気性微生物の働きを利用して非常に質の高い水を作っているが、これは途上国に導入しても根付くことはない。なぜなら、費用もエネルギーもかかる上、メンテナンスも欠かせないからだ。それゆえに途上国では、自国に適した省エネ・低コストの下水処理システムが求められている。

こうした観点から、大橋先生は約20年もの間、途上国それぞれの地域に根差した下水処理システムの開発をめざし、研究に打ち込んでいる。

現在、開発に成功しているのは、嫌気性処理技術である「UASB法」と、その後処理プロセスとして好気性「DHSリアクター」をつないだ下水処理システムだ。(DHSはスポンジを生物保持担体として用いた新規の好気性処理技術のこと。)低コスト・創エネルギーで維持管理が容易なUASB法と、その弱点をカバーする処理水質向上のための後処理プロセスを組み合わせたこのシステムは、余剰汚泥発生ゼロ、処理水質は活性汚泥法と同等であることが実証されている。

「このシステムはインド政府から高く評価されていまして、カルナール市で大規模プラントを作って10年ほど実用化に向けた実験を続けた結果、アグラ市に世界初のUASB-DHS下水処理システムの第1号機実プラントが建設されています」と先生。

その後はさらに、同システムのクオリティアップを狙い、処理水からの温室効果ガス放散を防ぐ技術や、排水からの資源回収および新規微生物の培養といった、新たな環境技術の確立をめざした研究が続けられている。

環境保全工学の基礎となる熱力学を中心とした講義と演習

たおやかプログラムで先生が担当する教育科目は、「環境保全工学特論」。環境・エネルギー問題を把握する上で欠かせない熱力学を、環境との関係を交えながら基礎から学べる、シビルエンジニア向けの講座である。

「この講座では講義や演習を通して、たおやかプログラムで扱うことになる環境問題やエネルギー問題についてのベーシックなところを身に付けてほしいですね。文系の学生には少し難解な部分もありますが、何かものを見るためには、基礎が分かっていることが大切。基礎があればアプローチしていけますからね」と先生は言う。

また、オンキャンパス教育の間には、そうした基礎づくりの一環として、出かけていく国それぞれの事情についても知っておく必要があるとも話す。

「私の研究の場合もそうですが、途上国のための技術開発というものは、途上国に受け入れられる技術でなければならないので、相手方が何を考え、何を望んでいるのかということを知った上で研究をすべきなんですね。同様に、学生の皆さんには、オンサイトに行く前準備として、そこを知っておいて欲しいと思います」と大橋先生。

これまでの経験から、どの国の人々も多くの要望を持っていることを実感していると言い、学生にはそうした声にも耳を傾けて欲しいと期待する。

有意義なオンサイト教育実現に向けて、学生自身も基礎固めを

大橋先生は同プログラムの副指導にも就いており、その円滑で有効な進行に向けて力を注ぎたいと話す。

「実際に途上国でのオンサイト経験が20年ほどありますから、そうした経験を生かした指導やサポートをしていきたいと思っています。現状ではまだ直接指導する学生はいないんですが、いずれはインドやインドネシアなどの途上国関連の研究・調査をやってもらいたい」。

実のところ、先生のなかで、たおやかプログラムへの思いはまだ固まっていないそうだが、学生たちには次のようなエールを送ってくれた。

「とにかく行って来い!という思いがありますね。僕が与えるのではなくて、環境が悪い所に行くことで気づいたり感じ取ったりすることができる。そこから得られるものは大きいと思います」。

先生によれば、環境問題を考える“原点”は『気づき』であるとのこと。
「何が問題なのかということが分からないと対策はできませんよね。実際に、学内の講義で尋ねてみると、分からない学生も少なくないんです。だから、感じ取るということが大切。感じるためには、基礎的な知識も必要です。オンサイトで気づきを得るための基礎は、こちらでしっかり身に付けていってほしいですね」。
もうひとつ、大切なのは『志』であるとも言葉を添える。

「将来どういう社会を築きたいのかということもちゃんと胸に抱いて行く。それがないと、おそらくダメですね。見方や考え方もそこから変わってきます。学生の皆さんはぜひオンサイトまでにしっかりと準備を!」。

大橋 晶良 教授
オオハシ アキヨシ

工学研究科・社会基盤環境工学専攻

1984.4.1~1992.3.31 呉工業高等専門学校土木工学科 助手
1992.4.1~1995.3.31 呉工業高等専門学校土木工学科 講師
1994.3.24~1995.1.31 ノースウエスタン大学 客員研究員
1995.4.1~2006.8.31 長岡技術科学大学環境・建設系 助教授
2006.9.1~2007.3.31 長岡技術科学大学環境・建設系 教授
2007.4.1~ 広島大学大学院工学研究科 教授