広島大学伝統のインド研究を生かし、新たな可能性を拓く 文化創生コース 文学研究科 友澤 和夫 教授 近年、経済発展著しいインドの地理学的研究

地の理(ことわり)を明らかにする学問「地理学」が専門

地理学を専門とする友澤先生はこれまで、特にインドの地理学的研究を中心に研究畑を歩み、インドへの渡航は21回を数えるという。

まず地理学について説明しよう。地理学には、(1)ある地域の特性を探求する「地域分析型」と、(2)ある現象の空間的特性を探求することを目的とする「空間法則追求型」の二つがある。(1)は村・都市・工業地域というような特定地域の形成過程や内部構造を探求するものであり、(2)は立地など地図に描けるような現象を対象に、そこに法則性や一般性が存在するかどうかという観点から研究するものだ。そして地理学の領域には、人文地理学・自然地理学・地誌学がある。このうち、先生の専門分野は「人文地理学」にあたる。

「最近の研究の中心は、『インドの工業化』。特に、『インドの工業労働市場』について調査・研究を行っています」。いまインドでは、各地に工業地帯が形成され、工業が大きく成長している。特に自動車産業の成長が顕著で、その下で形成された労働市場の特性を調べているところという。

「細かく見てみると、直接雇用よりも請負雇用の方が増えている。いわゆる人材派遣のような形態ですね。こうした非正規化する労働市場について、そうした現実をどう説明するかという研究を行っています」と先生は言う。まずは現地の様子を統計的に押さえていくということが重要で、その上で今年の2月には、現地の大学の協力を得て、ワーカーにヒアリング調査を実施したとのこと。

現代インドについての専門的な学習を深める

たおやかプログラムで先生が担当する科目は後期の「現代インド地誌学」だ。この中では、現代インドについて網羅した先生の編著の内容を学ぶとともに、特定のスキルの習得も目標として設定されている。そのため、講義形式の授業に加えて、実習的な側面を持った学習も展開される計画だ。

「もしもインドをオンサイト教育の場に選ぶのであれば、インドの現状がどのようなものかということは、しっかりと知って欲しいですね。さらに、例えば、人口に関するデータはどこから入手可能で、どういった種類のものが得られるかという風な“情報を知る”と共に、学生自身が人口にかかわる各種の空間分析を実行し、それを基に考察を深められるまでになって欲しいと思っています」と先生は期待を込める。

すなわち、インド研究をする上での「基礎的な知識」および「理解」、そして一定の「スキル」を身に付けることが、先生の教育研究の目指すところと言えよう。

さらに、オンサイト教育で、インドに出かけていくことになった場合には、インドでの現地調査をサポートし、創造性や忍耐力、協調性などを育んでいくことに努めたいと語る。

これまでの実績をベースに、問題解決へと挑む新たな取組み

広島大学には、40年以上にわたるインド研究の歴史がある。『広島大学現代インド研究センター』は、そうした実績が評価され、2010年度に人間文化研究機構の地域研究推進事業「現代インド地域研究」の一環として、同機構と広島大学により共同設置された研究拠点だ。

「本センターの存在自体が、たおやかプログラムの教育研究に大きな信頼と可能性を付与しています。
そうしたこともあって、たおやかプログラムには、私だけでなく、岡橋センター長ほか2名の先生方が参加しているんですよ」と友澤先生。

また、初めての取組みを前に、先生の胸中はいささか複雑でもあるという。

「たおやかプログラムでは、我々のこれまでの研究実績や経験が生かされる場面が多くあると予想しています。その一方で、文化創生コース所属教員の研究は、現状の把握や解釈、そのための理論構築を中心としてきました。本プログラムでは学生が現地で具体的な問題を見つけ、その解決策を見出す方向を目指しているので、従来の学問の枠には収まりません。学生が有意義な経験や成果を得られるように、教員自身が新たな発想をしていく努力も必要だろうと考えているところです」。

このようにインドに精通した指導者の存在は、本プログラムの大きな力となっている。

友澤 和夫 教授
トモザワ カズオ

文学研究科・人文学専攻・教授

1990.4.1~1994.9.30  東北大学理学部 助手
1994.10.1~1999.3.31 岡山大学環境理工学部 講師
1999.4.1~2001.3.31  広島大学文学部 助教授
2001.4.1~2006.3.31  広島大学大学院文学研究科 助教授
2006.4.1~ 広島大学大学院文学研究科 教授