MENTOR
INTERVIEW

国際的なフィールドで交通と暮らしのこれからを考える研究

交通の側面から
問題の発見と
解決に挑む
エキスパートに


社会実装コース

先進理工系科学研究科 藤原 章正 教授

国際的なフィールドで交通と暮らしのこれからを考える研究

 

「交通」をキーワードに、あらゆるまちづくりを研究

藤原先生の専門は「交通工学」と呼ばれる分野だ。

「ひと言で言うと“交通まちづくり”ですね。まちをつくるのに交通は大変重要な役割を持っています。例えば、道路をいつどこにどのくらいのレベルのものをつくればいいかとか、公共交通機関と道路を何%ずつ分担しあえばいいのかといったことを、経済活動や環境に及ぼす影響などを考えながら算出していくというような研究をしています」と先生。

その他にも、先生はこれまで、あちこちで発生している、中山間地域の限界集落やオールド・ニュータウンといった問題にも関心を寄せて、そうした地域に暮らす人々の生活改善策についての研究にも取り組んでいる。

「限界集落のお年寄りと話してみると、大半の方が不便であっても、自分たちはできるだけ何もせずに、資産などは次の世代に継承したいとおっしゃる訳です。これはある意味、『社会的排除』なんですね。やりたいことを我慢させている。こうした現象が交通で変えられるのではないかという研究をやってきました」。

この研究はさらに、その後の「オールド・ニュータウン再生」という研究にも役立てられている。これは、かつてのニュータウンが誕生から時を経て生活者全体が高齢化し、極めて暮らしづらい街になっているところを、なんとか暮らしやすく再生しようという取り組みだ。

いずれの研究も、モビリティ・マネジメントの重要性を広く世に知らしめる、非常に有用性の高い研究となっている。

必要な先進技術を条件不利地域へともたらすために

先生がたおやかプログラムで担当するのは、「交通計画」と「ディベート演習」の2科目だ。

「『交通計画』では、貧困にあえぐ南アジアの地域とか、少子高齢化に直面しているような日本の中山間地域にお住まいの方にとって、すでに開発された技術をどのように社会に実装すれば、そうした問題の削減につながるかということを研究したいと思っています」と先生。

例えば、自動運転技術を考えてみよう。もしも、毎日山の上まで何回も水汲みをしているような途上国で、自動で水を運搬してくれるような仕組みが活用されれば、輸送に費やす時間や労力を学習や生産活動に使うことができる。しかしながら、こうした条件不利地域にとって、この技術は最も必要とされているにも関わらず、大変高価で利用しづらいというのが現状だ。一方で、実際にこうした技術が採用されている国々には、水道はもちろん、コンビニも電車も整っていて、当該の技術についても比較的安価で購入でき、利用しやすい。つまり、せっかく開発した技術も、本当に必要な人のところには行き渡っていないという逆の社会構造になっていると先生は指摘する。

「私は以前からこうしたことに随分疑問があったんです。そこで、たおやかプログラムでは、本当に困った人たちのところに、必要な技術を実装することを目指したい。そうしたことに取り組める人材こそが、途上国にも日本にも必要なのではないかと思うんです」。

学生たちには好奇心や冒険心を持ってチャレンジしていくことを期待しているという。

現場を知り、ディベート力を備えた、実践的に活躍できる人材に

藤原先生がたおやかプログラムにかける思いは大変熱い。何故なら、これまで国際協力研究科で20年に渡って積み重ねてきた研究成果やさまざまな経験が大いに生かされていくと思われるからだ。

「国際協力研究科は留学生が7割を占める大学院でして、もともとたおやかプログラムが目指す教育環境に近いところがあります。そうしたこともあって、私が担当するもう一つの科目、『ディベート演習』では、日本の学生、途上国の留学生、先進国の留学生など、いろいろな人が英語で議論するなかで、本当の意味でのコミュニケーション能力の習得を狙います。

論理的に物事を考えて、瞬間的に判断をして、それを分かりやすいことばで口に出せる。これが国際社会で求められるコンピテンシーの1つです。そして、この演習で培った英語によるコミュニケーション能力を、すべての科目で生かしていって欲しいと思うんです」。

さらに、インターンシップやオンサイト研修、オンサイト・チームプロジェクトという三段構えの実践科目が準備されている「オンサイト教育」についてもこのように解説する。

「オンサイト教育では、学生自身が条件不利地域というサイトに出かけて行って、そこで使える研究をする。現場をよく知り、プラティカルな研究をしていくというのがポイントで、日本の大学院の教育改革と言ってもいい。本プログラムを通して世の中に貢献する能力を身に付けた博士号取得者が数多く輩出されることを願っています」と微笑んだ。

藤原 章正 教授
フジワラ アキマサ

先進理工系科学研究科・先進理工系科学専攻・理工学融合プログラム

1985.4.1~1993.4.30 呉工業高等専門学校 助手
1993.5.1~1994.5.31 広島大学工学部 助手
1994.6.1~2002.3.31 広島大学大学院国際協力研究科 助教授
2002.4.1~2020.3.31 広島大学大学院国際協力研究科 教授
2020.4.1~ 広島大学大学院先進理工系科学研究科 教授 併 副学長(学術院担当)

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