MENTOR
INTERVIEW

開発途上国における農村経済と貧困問題の研究

条件不利地域の住民が
直面する苦難を理解し
幸福度の向上につながる
解決策の提案を。


文化創生コース

人間社会科学研究科

Niraj Prakash JOSHI 准教授

開発途上国における農村経済と貧困問題の研究

 

貧困地域の農村の現状を知り、負の循環を断つ解決策を探る

Joshi(ジョシ)先生の専門は「農村経済学」。開発途上国における貧困、食糧不安、農村生活、気候変動に関連する研究に取り組んでいる。特にネパールの極西部地方の丘陵地帯の貧困地域や、ネパールの中央丘陵地帯にある貧困に陥り疎外されたチェパン・コミュニティに焦点を当てており、北インド亜大陸における農業商品の生産と貿易に関する研究も行っている。

発展途上国の農村コミュニティの大多数は、自給自足農業による貧困の悪循環に陥っており、家族を養うことができないまま取り残されてしまうことが多い。しかし、先生は農村生活全般を研究対象に、彼らの将来的な幸福を考えていく。

「貧困の悪循環を断ち切り、『持続可能な開発のための2030年アジェンダ』に貢献しようとする世界的なイニシアチブ、農村コミュニティを参加させることを目指すあらゆるイニシアチブにおいて、農業は重要なセクターとなり得るでしょう」

先生は大学院生を対象に、農業生産経済分析、特別研究、オンサイト教育系科目、Developing Designing Ability、国際協力論などの講義を行っている。また、広島大学の学部生を対象としたe-START+プログラムのコースにも参加。このコースでは、インド・デリー大学ミランダハウス女子大学とネパール・トリブバン大学農畜産学研究所の大学院生が、開発の重要な課題を特定し、実践的な解決策を提案するための共同研究を行っている。

「研究の特徴はフィールドベースであるということ。農村地域でのフィールド調査、コミュニティとの交流を通じて得られたデータは、問題をより深く理解するのに役立ち、定量的な分析から得られた知見を補完する重要な洞察をもたらします」

オンサイトでの教育も問題に直接触れるスタイルを徹底

たおやかプログラムで先生は、主にオンサイト系教育科目を担当。米国・テキサス大学オースティン校、インド・ビルラ技術科学大学ピラニ校、ネパール・トリブバン大学と共同でのオンサイト研修の企画・実施に携わるほか、オンサイト・チームプロジェクトにおける研究プロジェクトの開発と実施について学生にアドバイスを行っている。

これまでに先生が関係したオンサイト教育の事例には次のようなものがある。
(1)広島県北広島町の地域活性化/コミュニティ参加による文化の保全促進への理解を深めることを目標に、文化イベント「花田植祭」を現地視察し、関係者との交流を図り、グループワークで課題解決のための新たな解決策を提案した
(2)ネパールの農村の大地震からの再建/2015年の破壊的な「大地震」の後、住宅再建の苦難に直面していた地域を訪れ、住民との交流を通して課題と展望を探り、政策立案者への提案を行った

先生はたおやかプログラムでも、学生が直接、問題に触れるという教育スタンスを大切にしている。

先生は、貧困と飢餓は多くの国際協力にも関わらず続いていると指摘。 「貧困や飢餓のない世界を実現することは、我々の共通目標です。それらの問題の解決策を提案する上で非常に重要なのは、貧困地域やコミュニティが直面する苦難を理解すること。そこから、途上国の農村コミュニティが、どのようにして幸福度を向上させることができるのかということの答えを見つける必要があります。同プログラムでは、文化的(異なる文化的背景(国籍)からの参加者)および学術的(異なる教育分野からの参加者)に多様な視点から、これに取り組みます」

グローバルリーダーを目指す経験から得られるものは大きい

Joshi先生は2011年に広島大学大学院国際協力研究科(IDEC)で博士の学位を取得後、特任助教として1年在職したのちに帰国したが、2014年にたおやかプログラムが始まると同時に広島大学に戻り、これまでずっと同プログラムを支えてきた。それだけに、このプログラムへの愛着はひとしおである。

「たおやかプログラムは、チャレンジングな教育改革という面もありながら、リーダーを育成するという観点から言っても、土地の文化を適切に理解することをベースとして、技術を理解し社会実装していくという目的に沿って、うまく運営されてきたのではないか」と評価する。

先生は、自身の研究姿勢と同様に、問題に直接触れることで、学生が成長していくことができると考えており、同プログラムの意義を強調する。
「たおやかプログラムの目的は、文化・技術・社会をつなぎ発展をリードするグローバルリーダーを育成することです。異なる分野の学生が共通の目標に向かって一緒に作業するのは難しいことですが、むしろ異なる視点を得て、より幅広い社会的利益に向けて自分の知識を適用するための批判的思考を養うことができる、行う価値のあることと言えるでしょう。これからは、平和的な共存のための交渉力を身につけ、当事者の規範や価値観を尊重した解決方法を提示できるリーダーが求められます。自分の専攻や快適な居場所を超えた学習に積極的に取り組むことで、学生たちはさまざまな力を身につけていくことに期待しています」

2020年はオンサイトで取り組むべきことの多くが不可能になり、すべてオンラインでの実施となったが、そうした中でも先生は努めてインタラクティブな関係づくりを進めている。

Niraj Prakash JOSHI 准教授
ニラズ プラカシュ ジョシ

人間社会科学研究科 人文社会科学専攻 国際経済開発プログラム

2020.4.1~ 広島大学大学院人間社会科学研究科 准教授
2017.4.1~2020.3.31 広島大学たおやかプログラム 特任准教授
2014.3.1~2017.3.31 広島大学たおやかプログラム 特任助教
2013.2.17~2014.2.16 ポカラ大学 ネパール工科大学大学院センター 准教授
2011.10.1~2012.9.30 広島大学大学院国際協力研究科 特任助教

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