MENTOR
INTERVIEW

人工筋を使った人間拡張テクノロジーの研究

条件不利地域にも
運動アシストなどの
新しい工学技術を
生かしていく必要性。


技術創生コース

先進理工系科学研究科

栗田 雄一 教授

人工筋を使った人間拡張テクノロジーの研究

作業や運動を支援する人間拡張アシストデバイスの開発

栗田先生は大きく分けて、1.「人間拡張技術」2.「次世代インターフェイス開発」3.「触感・力感デザイン」という3つの研究を進めている。

なかでも、人間拡張という分野で先生が注目するのは、「人工筋を使った運動アシスト技術」である。その特徴は、柔軟で軽量でコストも安く、装着が簡単にでき、一般の人が日常生活で、しかも屋外でも使用できるというもの。いわゆるロボットを使った運動アシストが、重くて壊れやすく、高額で、装着するのに人手や時間がかかるものであるのに比べて、普段使いへの応用への期待度は格段に高まっている。

「介護福祉サービスや製造業、農業などの幅広い環境で導入され始めたこの技術は、たおやかプログラムで条件不利地域の方々に使ってもらえる技術のひとつと考えています」と栗田先生。

「新技術は現場で今すぐは使えないことが多いので、たおやかプログラムでは扱われないと思っている方もいるかもしれませんが、いま使えなくても、その新技術は、もしかしたら、10年後には使えるかもしれない。我々はむしろ、その可能性を信じて、新技術の研究をするという立場なので、たおやかだから新技術はやらないということはありません。ただ、たまたま私が研究を進めている、人工筋という、比較的小さなエネルギーでも動くソフトアクチュエータは、たおやかプログラムの思想とうまくマッチしているのではないかという思いはありますね」。

オンサイトで実際の使用感を確かめるユーザスタディを実施


先生は同プログラムで、「生体システム特論」を担当。基本的には、前半を座学、後半をグループワークで進めるという。その内容は人間工学・ヒューマンインターフェイス・人間拡張・バーチャルリアリティ・ロボットなど、「人と機械の関係であれば何でも扱う」とのこと。「過去のグループワークでは、人間工学的に優れたものと優れてないものをグループで探して、なぜそう思ったのかをポスター形式で発表したり、重さ感を錯覚するワークショップをして、どれほどおかしなものを作れるかをグループ間で競うといったことなどをやっていました」。

これまでのたおやかの指導学生の場合には、オンサイトでの活動にも特徴が見られたという。
「2020年3月の修了に向けて博士論文を書いた男子学生は、インドからの留学生でしたけれども、人工筋を使った歩行支援スーツを研究していました。実際の環境で使っていくために必要なことを探るために、ユーザとして想定するような農場の方や高齢者の方などにそれを着てもらって、実際に歩行や作業をしてもらう。その後、どんな風に感じたかをアンケート評価し、その内容をフィードバックして、新しい技術の開発につなげていく、といった活動をしていましたね」と先生。こうしたユーザスタディまでおこなうのは、たおやかプログラムならではのことと評価する。

条件不利地域にも新しい技術を。工学的研究を反映したい

栗田先生は技術創生コースのメンターの一員として、2015年度からたおやかプログラムに参加。現在は3名の学生を指導している。

そして、たおやかプログラムに対する思いについては次のように語ってくれた。
「たおやかの学生を一般の学生と分けて扱うということはまったくしていませんし、たおやかでは人工筋だけやるというつもりもなくて、学生さんの興味に応じてテーマを決めます。
私の興味は、人と機械・道具との物理的な相互作用で起こる現象の理解と、そのデザインです。いわゆるハプティクスとかヒューマンインタラクションという分野を研究していますので、学生さんと興味が合うところを一緒に進めていければと思います」。

先生のポリシーは、『楽しいは正義』であるという。例えば、健康になるためには運動が必要だけれども、運動がつらく苦しいものだと思ってしまえば,やらなくなってしまう。ところが、運動を楽しいものにできれば、楽しく健康になれる。先生の運動アシスト技術研究の根底にあるのも、「しんどい運動やトレーニングを楽しくしたい」という思いなのだ。先生は、人がアクティブに活動できるということを支援するために、「ちょっと技術を入れてあげる」ことが必要で、そこにスポーツやゲームのエッセンスを取り入れることが重要だと考えている。「楽しい」ことが可能性を拡げる――こうした発想は、リハビリや操作訓練など、幅広い分野に生かされていきそうだ。

栗田 雄一 教授
クリタ ユウイチ

先進理工系科学研究科・先進理工系科学専攻・電気システム制御プログラム

2005.1~ 2007.3 広島大学大学院工学研究科 特任教員
2006.1~2006.3 ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校 客員准教授
2007.4~2011.3 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授
2010.3~2011.3 ジョージア工科大学 客員研究員
2010.2~2017.3 産業技術総合研究所 協力研究員
2011.10~2015.3 科学技術振興機構さきがけ「情報環境と人」研究領域 研究者
2011.4~2017.3 広島大学大学院工学研究院 准教授
2017.4~2018.3 広島大学大学院工学研究科 准教授
2015.7~ 広島大学大学院工学研究院(2017年より大学院工学研究科に変更) 共同研究講座
     「コベルコ建機次世代先端技術共同研究講座」 連携教員
2016.12~ 科学技術振興機構さきがけ「社会と調和した情報基盤技術の構築」研究領域 研究者
2017.7~ 東京大学先端科学技術研究センター 稲見・檜山研究室 客員研究員
2018.2~ 広島大学 学長特任補佐
2018.4~ 広島大学工学研究科長特別補佐(国際共同研究担当)
2018.4~2020.3.31 広島大学大学院工学研究科 教授
2018.10~2019.11 広島大学 脳・こころ・感性科学研究センター 感性脳工学部門長
2019.12~ 広島大学 脳・こころ・感性科学研究センター 人間拡張学部門長
2020.4~ 広島大学大学院先進理工系科学研究科 教授

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