MENTOR
INTERVIEW

沿岸災害と再生可能エネルギー資源に関する研究

地球温暖化と災害
そしてエネルギー問題を
正しく知り
より安全・安心・持続可能な
発展をするために


社会実装コース

先進理工系科学研究科

李 漢洙 准教授

沿岸災害と再生可能エネルギー資源に関する研究

 

この世は「波」でつながっている。多彩な可能性をはらむ研究

土木工学・海洋工学を専門とする李先生。研究の道へと進むきっかけは、高校物理で学んだ「波」への興味だったという。


基本となる海洋工学では、港や防波堤などの構造物を設計する際に考慮する外力の対象となる「波」を研究。

高波や高潮といった風による波がどこまで大きくなるかを理論的にあるいはコンピュータモデルの作成などによって予測することに重点を置いている。


「地球温暖化に伴って、海水温度も高まると、スーパー台風が来る確率が高くなり、高い波が来る確率がもっと大きくなるのは多分間違いないだろうというのが、我々の研究グループではひとつのコンセンサスになっています」。

そこで、波の予測や沿岸域にもたらす影響評価を行う先生の研究成果は、警報システムの整備や防災対策のための技術開発等に応用されていくという。

「土木工学は最先端の科学だと言っても過言ではないと思うんですね。そして、海岸工学は土木工学のなかでも、難しい分野だと思われていて、この分野を選ぶ学生も少ない。

力学のなかでも一番難しい水を扱いますし、河川の流れや気象、海洋からの影響、沿岸域の人間活動などすべて取り入れないといけないから、すごく難しいのは間違いない。だからこそ、すごく魅力的でおもしろいと僕は思っています」と先生。


最近では、エネルギー分野へと研究を広げ、特に(洋上)風力発電、太陽光・太陽熱発電や波力発電のエネルギー資源の定量的評価に熱心に取り組んでいる。


「地球温暖化の加速化とそれを食い止めるカギは多分、海に深く関連すると思う」と、研究のこれからを見据える。

地球温暖化議論のバックグラウンドとなる技術論を学ぶ

たおやかプログラムでは、「エネルギー技術論」を担当する。この教育科目では、太陽光発電、風力、海洋エネルギーといった再生可能エネルギーについて講義し、2~3回は現地見学を実施。過去には、温井ダムや太陽光発電施設、処理水で小さな水力発電を行う施設がある西条下水処理センターなどを訪れている。そして最後に、学生による発表で締め括られる。

「主に再生可能エネルギーに関する技術的な仕組みの解説から始まり、応用の仕方や廃棄物の処理方法など、技術的な内容が多く、難しいと感じるかもしれない。
しかし、理工系以外の学生さんも多く受講していて、地球温暖化を背景に、開発・エネルギー・環境の関係に関する講義と議論で纏めていくので、異分野からの多くの学生が是非知っておいて欲しい内容です」。

先生がこう話すのも、この講義を通して、 「自分たちの問題を知って欲しい」と願うからだ。


受講する学生の多くは、アジア諸国からの留学生で、帰国すれば、公務員など、高い位置で意思決定者になりうる人々だ。それだけに、この講義の持つ意義は大きい。


「技術的な背景を知らなければ、間違った意思決定をする可能性もある。それを減らすきっかけのひとつになれば」。

さらに、「地球温暖化について10人中7~8割ぐらいはそのプロセスや科学的根拠についてよく知らない」と先生は言い、「講義を通して、私たちは何ができるかといった問題が議論できるようになり、そういった意識ができるようになる。

自分の行動や仕事や日常生活のなかで意識してくるようになったら、それだけでも意味があるのかなと思ってます」と受講後の学生の変化に手応えを感じていると話す。

専門分野への意欲も高まる有意義な分野融合プログラム

メンターとして関わるたおやかプログラムについて、李先生は、「理念やミッションがはっきりしていて、分かりやすい。それを理解した学生さんが集まってきていて、とても充実していると思います」と評価する。


さらに、自身の経験から、分野融合的な取り組みに触れることを推奨する。


「私は2007年に広島大学にやってきて2016年に准教授になる間に2年間、他大学に行っていた時期があるんです。

その理由のひとつは、他分野のひととの会話に壁のようなものを感じて、本来の専門分野に戻りたいという気持ちでした。しかし、IDECで過ごした時間が無駄ではなく自分の意識の変化を感じました。特に途上国における環境問題などを解決するには、工学や科学的なアプローチだけでは困難で、分野融合でもっとできることがあるのではないかと考え、戻ってきたんです」。そして、学生たちにも、もちろん自分の専門性を高めながら、専門分野以外にも少し視野を広げてみて欲しいと期待する。

「分野融合プログラムに参加することで、専門分野で習ったものが実際に現場に役立つというのが目に見えてきたら、専門分野の授業に参加する姿勢も変わってくるし、もっと目がキラキラするはず。


たおやかプログラムのように、分野融合でいろんな話を聞くチャンスはなかなかありません。専門分野で学んだ知識を、現実の問題にもっと役立てたい、なんとかしたいと考えている学生さんがいれば、本プログラムに参加することは本当に有益だと思います」。

李 漢洙 准教授
リー ハンスウ

先進理工系科学研究科・先進理工系科学専攻 理工学融合プログラム

2007.10.22~ 2008.3.31 広島大学大学院国際協力研究科 COE研究員
2008.4.1~2008.9.30 広島大学大学院国際協力研究科 研究員
2008.10.1~2010.3.31 広島大学大学院国際協力研究科 特任助教
2010.4.1~2014.3.31 広島大学大学院国際協力研究科 助教
2012.1.1~ 2012.3.31 台湾・国立中山大学海洋科学院 客員研究員
2014.4.1~2016.3.31 埼玉大学建設工学科 准教授
2016.4.1~2020.3.31 広島大学大学院国際協力研究科 准教授
2020.4.1~ 広島大学大学院先進理工系科学研究科 准教授

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